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PBCサイト『Petit -ペティット-』に参加中のPLが、主に独り言を呟きたいという欲求を満たす為のブログです。 暫定的に。
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 今更のように対SS。もう何ヶ月空けちゃっただろう。
 そして相変わらずも対なのかどうかわかり難い、文章力的な意味で閲覧注意、あと誰得。

 官能的で疾走感のある文章を目指して大爆発した代物ですが、それでもいいという奇特な方は追記へどうぞ。


※4/10 14時半ごろ、コピペミスで改行や空白が消えていた部分やうっかり一つ前の稿を張った部分、誤字・揺らぎ等を修正。内容は変わっていませんが一文くらい増えてます。
 ……見直しもうちょっとしろよ……。


 






「オレの相手しろ」

 張り上げた呼びかけの後、トーンを落としてごく簡潔な要求。
 それがずっと続くなんて、その時には。



 【One’s Color】



 その事件は酷く陰気で、「戦いを愉しむ性質の者が居る」と聞いた時に抱いた期待というのは、口直しとしてのそれに過ぎなかった。
 見(まみ)えて走った興奮は、欲求不満に火が着いて、“敵”ならば生死を考えずにそれを叩き込めるだろうという悦びでしかない。

 まだ冷える三月の夜のことだ。西へ傾いた銀色の細い月が、それでも鋭い光を投げていた。
 だが、蒸気さえ立てそうな熱を払うには足りない。

 吠えるような声は脳を掻き回すようだ。イイぜ、精々愉しませてくれよなァ。そりゃあコッチの台詞だ、色男。そしてそれは叶ったんだろう。
 痺れは頭の芯に届くようで、脊髄を駆け上がるのは痛みの信号だけではない気がした。
 手応えが熱のようだ。徒手格闘もイケるクチか、と問えば、好きじゃァねェ、と答えが返った。答えが返った。
 押し込むと苦しくなった。加速していくのに当然の息苦しさなんだろうと思った。必死だな。趣味じゃねェだけだ。オレも、好みを言えばサシの方がスキだ。けれど好み以上に優先すべきものがあった。“敵”を潰さねばならないという目的が。
 望まない援護が作り出した隙へ、衝撃を叩き込んだ。月はもう沈んでしまいそうで、魔力で輝く街灯の光は決して冷たいものではない。
 滾る熱を、後先考えずにぶつけて事故を期待したかった。それは確かに必殺の一撃で、心臓を破ることさえ可能な爆圧だった。腹しか狙えなかったというだけで。
 実際は殺す気で打ち込んでいた。目的の為に。石畳にヒビが入る。しかし殺すには至らない。衝撃は内部で弾け切らず、大柄な身体を突き飛ばした。背後から銃弾が追撃をかけた。
 cause(動機)もexcuse(言い訳)も、倒れた相手へとどめを刺すには不十分だった。躊躇いがちな歩みは、撤退を許してしまった。「勢い余って」以外の言い訳は通用しない。
 それはとても残酷な事だ。
 適切に処置しなければ、後はただ緩やかに死に行くだけの身体にしたということだから。
 一人取り残されて、大剣に打ち据えられた肋骨が、今更のように痛んだ。そして、懐に飛び込んだ時、相手の手元にダガーがあった事を思い出したのだ。


--green, horizon, viridian, --


 取り返しの付かないことと言うのは、確かに在る。
 生きていると聞いたのは、その翌日だったか、どうか。
 密林の中を探し歩く。どうするのか、どうしたいのかも分からず、頭の中は何色もの絵具をぶちまけたようだ。
 何が正解だ。聞きたいことや言いたいことだけが山ほどあった。
 混ぜた絵具を筆でひっかく時、溶け残った原色が覗くみたいに。

 何が正解なのか、自分はどうするべきなのか、誰かに教えて欲しかった。
 他でもない、殺し損ねた相手にこそ、今更にそれを求めているような気もした。それが聞きたくて探したのかもしれない。
 同時に、答えられる者が居ないことにも、答えが出なくともただ一つの終点へ向かっていることにも、気付いていた。でたらめな混色は淀むしかないのは、誰だって知っている。


--red, blond, orchid, --


 時間ばかりが過ぎていくのは、耐え難い。
不貞寝でもするように、枝の上に身体を横たえた。いっそ野垂れてくれればいいとも思いながら。
 不意に奇妙なにおいが鼻をついて、それで「見つけた」。喉から呻くような声が漏れた。

 「――静かに終わっとこうと思ったのに……」

 その言葉が零れた理由も、静かに終わるとはどういうことなのかも分からない。それは夕陽の中でシルエットしか見えなくなるのと似ている。
 アンタをどうにかしようと――して、来たんだけどさ。元気? こちらを見る相手の目が妙に曇っているような気がした。覚えたって言ってた割りに忘れちゃいました? 隣に居た友人が聞いた。知らねェな。返った答えはそうだった。
 違っている。何かが。遅かったのか。何が。哀しい。今度は、逃がさねぇ。そしてそれは叶わなかった。隣からの援護射撃があってなお。哀しさを射抜くには足りない。
 言いたい事は山ほどある気がした。アンタが闘ったり殺したり何なりする、理由や言い訳やらが知りたい。それによっては――。それによっては何だったのか。あとは、オズにでも聞け。剣の一撃よりも重い言葉を言い足して、その姿が闇へ溶けた。

 殺すのが、命を奪うことが怖いんですか。隣から問われた。怖くはないような気がした。ただ惜しかった。失われることが。闘いの昂りが。
 闘いとは、事故を期待することではない。命を奪うことでもない。殺すことでもない。闘いとは。闘いだ。
 でたらめな混色の中で、絵具の艶がやけに光るみたいに、その答えがあった。
 淀んだ黄昏に熱はなく、祠に溢れる瘴気は、息苦しさに似ていた。


--mauve, rose, heliotrope, --


 ――If you died, I am dyed...
 眠る前に書き付け、夢の中で呟いた言葉。何に染まるというのか。
 仮眠から覚めて目に飛び込んできた遺跡の闘技用舞台は場違いなほど派手に飾り付けられ、夕陽に覆われ、本来の色が分からないほどだ。
 飾り付けた人間は、つい昨日死んだ。殺した。だからといって、辺りの光景を血になぞらえようとは思わない。舞台へ上がる。
 気分はどうよ。最悪? あァ、最悪で、最高だ。そしてそれは本当なんだろう。惜しいなァ。いつだって自分を昂らせるものは惜しい。惜しいとはつまり欲しいということだ。欲しかった。何が――何もかもが。
 “敵”である筈の相手に、何故だか言いたいことも聞きたいことも山ほどあった。答えはどろどろの欲求か、焦げるような衝動か、それともあの金属の鈍い光か。


 隣で喚く降霊術師の声。『うるせぇ』と、声が僅かに重なる。ざわめき。それはきっと弾丸が鎧に弾かれる音。期待感。
 名目はあくまで犯罪者の討伐だから、前に出る細い身体へ道を開ける。飛びかかれる距離を維持して待った。無粋だと思うんだけどなぁ。無理すんなよ。エルフが単純な切った張ったで人間に敵うわけ無いんだから。つまり寄越せと言いたかった。
 その細い身体が弾かれる。味方の無事を気にするより、目の前の相手に食いつきたい欲求が勝った。後方で詠唱が聞こえる――否、聞こえない。
 飛び掛るように、前へ出る勢いのまま放つ脚。笑い声が出迎えた。金属の衝撃は盾を弾くにとどまり、露な胴へカウンターの刺突。背筋に鳥肌。
 身体の捻りが装甲の最も厚い部分に刃を受けさせ、宙に浮いた身体は衝撃を逃がす。刃は肌へと至らない。
 だがその一撃は、明らかに骨を軋ませた。圧迫感が高揚を誘う。
 イイぜ、手前は愉しい。笑う。死ぬかと思った。笑う。楽しいのは事実だった。それだけに集中しなければ割れてしまうというように。何だ、さっきから気が合うじゃねェか。両の手で真っ直ぐに向けられる剣。防御を捨てた形。今はまだ何も斬っていないそれは赤く照り返す。熱と、何かが込み上げる。

「三女神の残酷なこと。オレ運命論者じゃねーけど」

 それは悲鳴。答えはない。誰も慰めてくれない。助けてもくれない。代わりに、大振りな斬撃が迫ってくる。それは答えよりも求めたもの。
 ただ、闘いたかった。事故を期待するでもなく、命を奪うでもなく、純粋に。常に思っていることが、今は殊更に強く胸を高鳴らせた。
 受け止めるには重いそれを受け流す。あえて、スーツの上を滑らせた。上手いじゃねェか。哂った。白銀の防刃繊維が覗き、血を流す代わりに赤く輝く。本当に血は流れていないのか。痛い。軋んだ骨だろうか。脚払いをかける。重量のある身体が倒れることはなかった。だが崩れた。
 一点へ尖らせた興奮が黒く閃いた。それは暴力的な確信で、反射的な支配欲で、本能的な意識だ。
 その顎を狙う。

 ――狙ってどうする気だったのか。どうするのが正解なんだろう。

 迷いと裏腹に、その一撃は重い身体を打ち倒した。派手な金属音が響く。赤い。空気の漏れる音がした。漏れたのは本当に空気だけか。赤い。


 倒れたその身体の右手を左足で押さえ、右の爪先を首元に添える。そうして上から覗き込んだ。
 静かだった。場違いな装飾ばかりがうるさい。場外の二人は何も言わない。ただ赤く染まるだけだ。その赤も段々と引いていく。くすんだ金にかかる赤は、暗く沈むようだ。
 首や顎や頭を踏み拉き蹴り割ることも出来た。それも無駄な苦痛のない終わらせ方だ。それを躊躇うのは、赤のせいではない。
 何もかもが惜しい。命が尽きようという時に、かえって赤が増すような顔も、シーグリーンも。舞台の下に放られた鞄の中には薄い絹や糸、脱脂綿、アルコール、グリセリンその他、つまりは死体を繕うのに必要なものが詰め込まれていた。
 招かれるままに身をかがめた。首元を押さえる右のつま先を、右手と入れ替える。
 入れ替わりに伸びてくる、左腕。その意図が分からずに、食いついて止めた。頚動脈にかけた右手へ力を込める。それも無駄な苦痛のない終わらせ方だ。
 手の中で喉が震えた。哂っていた。金属越しに歯へと伝わってくる力の流れは奇妙で、僅かに力を緩める。それで、甲が頬へ触れた。さらりと。金属の感触があたたかいのは、運動のせいか、照りつける西日のせいか。それはもう大分傾いていた。そしてわらうのだ。
 何かがあった。惜しく、欲した何もかもの全てでは無いにせよ、その中の何かが。何色を作りたくて、絵具を混ぜていたのかという答えが。
 吐息めいた笑いを漏らして、頷いてやった。咥えた指先から力が抜ける。

 落陽と共に尽きるような浪漫はなく、赤色は濁りながらまだ尾をひいている。


 観客はすぐに去ってしまった。構わずに血管を絞め続ける。長めに押さえておかなければ蘇生する恐れがあった。
 降霊術師が言う。遺体は俺が運んでいいかと。首の防刃布を解き、右手と入れ替える。保険だった。申し出は断り、先に帰らせた。
 このまま、亡骸と共に何処かへ姿を眩ませようとさえ思っていた。最初から一人ならそうしていたかもしれない。
 陽は落ちて、布だけが赤い。血が噴き出すみたいに、愚痴が唇から溢れた。


--pink, silk, cork, black, --


 物語ならばそれで終わった方が美しい。しかし現実でも同じ事を思うなら、それは単なる自己陶酔だ。
 半ば透き通ったその姿を見上げる。哀しいほど欲しかったものが今、触れられる場所にあった。欲した全て――その穏やかささえも。

「目隠しチェスだとアンタ、ワケ分かんなくなるだろ? だからさ、チェス盤だけ用意してやった」

 そうやって意地悪く笑ってみせる。怒声に笑い、結局は誘いに乗るのにも笑う。
 何にも勝る悦びは、他に何を気にするでもなく純粋に交し合うこと。それを幾度でも続けられること。これを何と呼ぶのかは分からないが、欲して惜しんで失ったものが再びそこへあるのだから、それは自分のものだと言ってしまって構わないのだろう。

 それはとても残酷な事だ。
 二度目の喪失があれば、上手く呼吸をすることが叶わなくなるだろう。それを避けるためなら、自分から息をやめてもよかった。
 それは命の使い道だ。向ける先が既に亡いものなら、その道が続いているのは、ただ一つの終点なのだろう。混ぜ続けた色は黒になる。重たくなった絵具を混ぜる為に水を加えていけば、その艶も消える。

 それでも。
 唇に乗せるとほんの少しだけ熱を生じるような、その音と共に――



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~あとがきてき何か~

 一人称なのか三人称らでぃ子視点なのかをはっきりさせずに書くのはやめた方がいいかと思う今日この頃。だが修正はしません。
 一応、向こう様が台詞の引用多めだったので、こちらではなるべく違う台詞を拾いつつ動きを多めに入れたつもりだったんですが、そうでもないかな。どうだろう。
 しかし艶(光)が消える → 音が残る・名前かは兎も角示す記号である という終わり方はかなり無理矢理のような気がしないでもない。

 ……らでぃ子ならシーツ被って震えてるよ!(かち割られる五秒前)
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盾|ω・)
訂正版を読み直したので、真っ二つにぶった切られないように盾に隠れつつお送りいたします。

何をどうしていいやらもうもう、こうして再度改めて見ると、お前よっぽどらでぃ子ちゃんが気に入ったんだなぁと、しみじみと言いたくなりますね、あるみゅんに。(真っ二つフラグ)
で、既にその時それが悲鳴だったとか、らでぃ子ちゃんったら、うふふふふ☆
対SS、本当毎度有難う御座います~。
騎士のなかのひと@フローズ 2011/04/18 (Mon) 00:11 編集
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確かなのは変態という病気を患っている事と、頭がよくない事、年齢制限は大丈夫だという事。
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